アシベニイグチと類似種

アシベニイグチは比較的普通に発生する菌ですが、群生することはあまりなく一人では一度に1〜2の子実体が採集できる程度です。その点、きのこの会採集会では10〜20名での採集となり沢山の標本を手に入れることができるため大いに活用したいところです。(日頃から研究目的で採集しているメンバーが皆無に近いため標本の状態がよくないのが難点です)

富士山の採集会ではアシベニイグチと思われる菌が10以上集められましたが、実はその中に2種類の菌が混在していることに気が付いているメンバーはいなかったのではないでしょうか。ひとつは正真正銘の Boletus calopusアシベニイグチ、もうひとつは個人的にアシベニモドキと呼んでいるBoletus sp.です。私称アシベニモドキは今シーズンの観察でアシベニイグチと似たような環境に比較的普通に発生していることが分かってきました。

Fig1 Fig2 Fig3
Fig4 Fig5 Fig6

Fig1からFig5はぱっと見、アシベニイグチとされていまいそうですがFig1からFig3はアシベニイグチではありません。確実に見分けるにはメルツァー試薬による呈色反応を見る必要があります。

Fig6右側4つは傘肉がアミロイド反応によって濃い青に変色していますが、これらがBoletus calopusアシベニイグチ、左側4つはアミロイド反応が無いため別種Boletus sp.であることが分かります。Fig7で反応の違いを比較しました。アシベニイグチでは速やかに濃青に変わります。

他に肉眼で見分けるポイントとなるのは傘表皮です。Fig8はBoletus sp.で小さな鱗片を付着しています。この鱗片は子実体成熟の度合いで変化があるようで幼菌では観察しづらいようです。Fig9はアシベニイグチ。ややビロード状の表皮でひび割れることがあっても鱗片を付着することはありません。この違いは顕微鏡観察ではさらに明瞭となり(今回は割愛)両者が別種であるとする重要な所見となるようです。

Fig7 Fig8 Fig9

アシベニイグチは明瞭な肉眼的特徴を持つため、柄が赤く網目があり、傘は茶色系、青変が強い、苦い等の所見のみで同定されていることが多いのではないでしょうか。実際、web上でも誤同定されていたり混同されている例も見られます。



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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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