水で膨らむ胞子

イグチの子実層托実質の散開した菌糸の間はゼラチン質で満たされているということですが、生きの良い標本を乾燥させるとカミソリの刃が入らぬほど固くなることがあります。そういう場合切片を作るには具合が悪いのでエタノールとぬるま湯で柔軟化させミクロトームにセットします。

今回たまたまですが、ぬるま湯につけたまま20分程度だったでしょうか、放置したのち胞子の大きさを測定しました。長時間水につけた胞子はふやけて膨らむという話をちらっと聞いたことがあったので、柔軟化せずに何とか切り出した切片で再度胞子の大きさを測定し比較してみました。長時間水につけた胞子(A)の方が大きい値が得られています。

  • A) (11.4-)12.5-14.1(-15.5) x (4.3-)5.0-5.6(-5.8) 平均13.3 x 5.3 N100
  • B) (10.0-)11.5-13.4(-14.6) x (4.0-)5.0-5.6(-6.0) 平均12.5 x 5.3 N100

長さの平均値に於いて、0.8μmほどの差が確認でき「長時間水につけた胞子はふやけて膨らむ」というのは事実であると言えそうですが「本当にそうなのか?」多くのサンプルで再検証することはないでしょう。「正しくない測定結果が得られる可能性のある方法は採らない」というだけのことです。



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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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