同定依頼

今まで4年間イグチの調査を真剣にやってきたという自負がありますが、地方の植物園に所蔵された標本の同定依頼を受けるまでになりました。とは言っても半分個人的な依頼なのですが。依頼の内容は「ニセアシベニイグチに近いと判断したが標本があるが、疑問があるので見てほしい」というものです。

国産の菌に海外から報告された種の学名が当てられていた場合、それらは海外の文献とぴたりと一致する例は少ないと考えています。そういった種の同定は結局疑問だらけになってしまい確実に「何々という種です」と言い切るのが困難です。が、ニセアシベニイグチは本郷博士が新種発表した種で、長沢先生による詳細な記載も存在しますので、きちんとデータをとれば同定ミスをすることはないであろうと思われます。

預かった標本は肉眼的には、管孔が著しく短く柄に垂生している点はニセアシベニイグチに一致します。通常は柄の頂部にこまかい網目をもちますが、この標本では認められませんでした。しかし、これは変異であるとみなしてよさそうです。

顕微鏡的に判断のポイントとなるのは縁シスチジアです。先端がやや肥大したこん棒形で、他のBletusではあまり見られない形状です。状態の良い標本であればFig.1-2のように、管孔縁部に群生している様子が確認できますが、預かった標本では乾燥の行程に問題があるのか組織がつぶれてしまっているようでした(Fig.4-5)。なんとなくですが、先端がやや肥大したこん棒形のシスチジアが見えます。Fig.3と6は柄シスチジアですが、双方とも同様の形状で原記載に一致します。

上記をふまえると預かった標本は9割方ニセアシベニイグチとして良いだろうという結論になります。

Figは、上段が私の標本、下段が預かった標本。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5 Fig.6


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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