Boletus separans

当サイトでは真面目に菌類研究について掲載しているわけですが、おかげさまでその筋の方々から学術的情報をいただける機会が多くなっています。最近はヤマドリタケ亜属イグチ亜目に関する最新の論文をいただきました。下記の論文です。

Nuhna ME, Binder M, Taylor AFS, Halling RE, Hibbett DS (2013) Phylogenetic overview of the Boletineae. Fungal Biology.

この論文で興味深かったのは、Boletus separansという北米産イグチの分類学的位置についてです。このイグチは日本産ムラサキヤマドリタケと、ほぼ同種ではないかと思われるほどに顕微鏡的所見が一致します。当サイトでは色の淡いムラサキヤマドリタケをBoletus pseudoseparans(B separansのシノニムとする研究者もいる)として扱っています。

Boletus separansはHalling & Both (1998)によってXanthoconium ウツロイイグチ属に移されました。論文を未読ですが、おそらく胞子の色を重視したのだと思います。Boletusの胞子紋は一般的にオリーブを帯びますが、B. separansは黄褐色でウツロイイグチの色に近いです。B. separansは幼時、孔口が菌糸で塞がれる(Stuffed Pore)というヤマドリタケの仲間と共通する特徴を持っていますが、それよりも胞子の色を重視したということなのでしょう。

Nuhna et al. (2013)では、DNA解析の結果Xanthoconium separansはポルチーニクレードに含まれるとされており、再びBoletus separansとするべきとしています。この分類群の場合は、胞子の色よりもStuffed Poreを重視すべきということが明らかにされたのです。

ムラサキヤマドリタケについて「Xanthoconiumとすべきなのか」いや「新属を設立すべきではないのか」など、勝手にいろんな想像をしていましたが、現時点ではムラサキヤマドリタケはやはりBoletusであるとすべきなのでしょう。

ではムラサキヤマドリタケ= Boletus separansなのか? 地理的に隔離されているので、系統的には別ものと考えるのが妥当ではないでしょうか。いずれにせよ先行研究のデータが充実したので、この先自身の研究がやりやすくなったのは確実です。

ムラサキヤマドリタケにそっくりなBoletus separansの画像

Boletus pseudoseparansとして扱っている色の薄いタイプ 典型的なムラサキヤマドリタケ


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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