早まった結論

これまでの記録では、ムラサキヤマドリタケのかさ肉の肉眼的呈色反応はいずれの試薬でも認められないということになっていました。青木図版はたいていの種に肉眼的呈色についての記述がありますが、ムラサキヤマドリタケについては表皮のアルカリでの反応のみが記されています。「青木さんも私と同様の結論だったんだ」と思ってしまい、それ以降呈色反応試験を行うことはありませんでした。

ところが、富山県の菌類懇話会メンバーから「ムラサキヤマドリタケのかさ肉にKOHをつけたらこんな色になったんですが」という写真をいただきましたが、そこには目を疑うものが写っていました。KOHで変色するはずのないかさ肉が、淡い紫色に変色しているのです。

ムラサキヤマドリタケのかさ肉は老成に従い黄色を帯びてきますが、これまでの呈色反応の記録はすべて若い子実体のものでした。これは再確認しなくては、ということで頃合いの良い標本を採集しやってみました。Fig.1の子実体ではかさ肉は黄色を帯びてきています。 KOHをつけたのがFig.2で、やはり紫色に変色しています。Fig.3はFeSO4ですが、これも灰青色に変色しています。黄色を帯びた肉にはKOHやFeSO4に反応する何らかの物質が生成されているのだと考えられます。

肉眼的呈色反応試験は方法は簡単ですが、このような見落としによる誤まった認識を持たないように注意して行うべきでしょう。

Fig.1 Fig.2 Fig.3


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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