系統樹

年末年始は塩基配列の文字列に埋もれながら過ごしました。これまでに得られた配列のデータは200サンプルを越え、そろそろ系統解析を試みてもよい状況となっています。右の図はLSU25S領域を用いた日本産ウラベニイロガワリ節の系統樹です。まだ詳細を公にできないレベルなので、文字が読みとれない程度に縮小してあります。

ぱっと見た感じではそれらしい結果が出ているように見えますが、菌類の系統を探るには全くダメで誤っている結果です。この図から言えることは「同種と思って集めた標本群はやはり同種だった」だけです。青色で示した箇所がそれに該当します。

なぜダメなのかというとOutGroupが適切ではないからです。一番下の赤色で示した箇所がOutGroupでアシベニイグチBoletus calopusを用いています。OutGroupは解析したい分類群から明らかに外側に位置しあまり遠縁でないものを用いるべきです。アシベニイグチがOutGroupとして不適切なのは遠縁すぎるからなのか?    いえいえ、逆でした。

イグチ亜目に関する最新の論文Nuhna ME, Binder M, Taylor AFS, Halling RE, Hibbett DS (2013) Phylogenetic overview of the Boletineae. Fungal Biology.によると、dupainiiクレード(*1)とされた集団にはこれまでウラベニイロガワリ節とされた菌群とアシベニイグチ節とされた菌群が含まれています。

アシベニイグチ節はウラベニイロガワリ節内に含まれるということになるのですが、試しにもっと広い範囲の分類群を用いて解析してみると、確かにそのようになっている傾向が見られました。

*1. Boletus dupainiiが名前の由来と思われます。日本産イグチのヒイロウラベニイロガワリB. generosusにそっくりです。



前へもどる次へ
牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










無料カウンター