子実層托実質菌糸の構造

イグチの子実層托実質菌糸の構造には2つのタイプがあるとされており、ひとつはヤマドリタケ型Boletus-type、もう一つはキヒダタケ型Phylloporus-typeで、簡単に言うと前者は散開型で、後者は明瞭に散開せずほぼ平行な菌糸からなるようです。

Fig.1-4は、ニオイバライロイグチの管孔縦断面で幼菌から最も成熟したものまで順番に並べました。これをみるとFig.1と2では明瞭な散開型の構造が見て取れますが、Fig.3と4は、散開した構造がつぶれて菌糸が平行に走っているように見えます。ヤマドリタケ属はヤマドリタケ型(散開型)とされていますので「ニオイバライロイグチの子実層托実質菌糸はヤマドリタケ型で、成熟にしたがいキヒダタケ型のようになる」といえます。これまでに見てきた多くの種でも同様の傾向があることを確認しています。

さて、ここで気になるのが真のキヒダタケ型はどのようなものなのかということです。定説ではキヒダタケ属Phylloporusとアワタケ属Xerocomusがキヒダタケ型であるとされています。実際に標本を見てみました。Fig.5はキヒダタケの1種で散開型であることがわかります。キヒダタケなのにキヒダタケ型ではなくヤマドリタケ型ということになります。Fig.6はアワタケの1種で比較的若い子実体ですがやはり散開型です。これまでに見た限りでは成熟したアワタケは並行型でした。

上記をふまえると、キヒダタケ型を定義する際、成熟した子実体ばかりを見ていたのではないのかという疑問が浮上してきます。十分に成熟したキヒダタケがどうなのかを見てみなくてはなりません。ひょっとするとヤマドリタケ型やキヒダタケ型と定義することは全く無意味で「全てのイグチ類の子実層托実質菌糸の構造は幼時散開型で、成熟に従い並行型になる」ということになるかもしれません。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5 Fig.6


前へもどる次へ
牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










無料カウンター