オオミノクロアワタケ その1

オオミノクロアワタケ Boletus griseus var. fuscus はクロアワタケ Boletus griseus の変種として記載されています。変種ということは、種レベルではクロアワタケの範疇に含まれますが若干の形態的な相違が認められるということになります。具体的に何の形質が異なるのかというと、オオミノクロアワタケは子実体の色がより暗色で、胞子が大きいとされています。

先日の宮城フォーレにおいて、暗色のクロアワタケ(Fig.1)を採集しましたが、この仲間について調べるのは後回しと決めていたので、あまり深く考えずにクロアワタケと同定してテーブルの上に置きました。広い意味では間違いではないです。が、会場全体の同定担当をされた方が「オオミノ? 胞子の大きさ確認が必要] と但し書きされたようです。なるほど、もっともな指摘です。同定会場には顕微鏡が用意されていますが、胞子の大きさを正確に測定できるセットはありませんでしたので、結局何も検討せずに放置しました。

奇しくもフォーレから帰宅したその晩に、愛知県から「オオミノクロアワタケでしょうか?] ということで標本が送られてきました。ちょうど良い機会なので手持ちの標本5つほどとあわせて以下の項目について検討しました。

1) 子実体の色の濃さと胞子の大きさには相関があるのか。
2) オオミノクロアワタケはクロアワタケに比べてどの程度胞子が大きいのか
3) 原記載に書かれていない比較すべき形質はあるのか

Fig.2-6はこれまでに収集したクロアワタケですが、改めてみると色が濃いものと薄いものがあります。胞子を測定した結果を以下に示します。いずれも80-120個測定し統計処理を行っています。

色が淡い標本
(9.4–) 10.3–11.4 (–12.5) × (3.0–) 3.8–4.4 (–4.9) μm
(10.1–) 10.7–11.8 (–12.4) × (3.3–) 3.8–4.2 (–4.5) μm
(8.8–) 9.9–11.2 (–11.8) × (3.3–) 3.6–4.0 (–4.2) μm

色が濃い標本
(9.0–) 11.5–13.6 (–15.3) × (3.6–) 4.4–5.0 (–5.5) μm
(9.8–) 11.5–13.5 (–16.3) × (4.1–) 4.8–5.4 (–6.0) μm

上記からは子実体の色の濃さと胞子の大きさには相関があると考えられます。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5 Fig.6


前へもどる次へ
牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










無料カウンター