種内Taxon

これまでに亜種(ssp.)や変種(var.)とされた標本をほとんど調べていなかったので、種内の分類階級について深く考えずにいました。ちょうど菌類懇話会会誌に変種について書く機会があったのですが、どうやら亜種と変種を混同して認識していたようです。変種の定義を「地理的隔離による種内変異」としていましたが、これは誤りであることが発覚しました。

ということできちんと文献から引用して確認します。命名規約には種内の階層構造については定義されていますが、具体的に「亜種とはなんぞや」といった記述はありません。引用するのは以下の文献です。

Winston JE, 1999. Describing Species: Practical Taxonomic Procedure for Biologists. Columbia Univ. Press. (ウィンストン JE 著 馬渡俊輔, 柁原宏 訳 2008. 種を記載する 生物学者のための実際的な分類手順. 新井書院, 東京.)

引用
亜種「ある種の地域個体群の集合であり、その種の分布域内の一画に生息し、その種の他個体群とは分類学的に異なるもの」
変種「1つあるいはいくつかの生物型(biotype)からなる1つの個体群で、当該種の多少とも明らかな局地相(local facies)を形成するもの」

なんだか難しいですね。亜種は「地理的隔離による種内変異」と簡単に要約できますが、変種はひとことで言うことはムリです。ただ亜種よりも下位の階級なので、少なくとも亜種とするほどの変異は見られないと思っていいのではないでしょうか。

ヤマドリタケ Boletus edulis は、多くの亜種、変種、品種が記載されましたが、Index Fungorumによれば、ほとんどのものがシノニムか、独立した種にされています。ひょっとしたら菌類では種内Taxonを認めないという方向に向かっているのかもしれません。

クロアワタケの変種とされたオオミノクロアワタケ


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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