ヌメリアシナガイグチはシノニム

Wu et al. 2016 は大変な文量の素晴らしい大論文です。ここのところきのこに 割り当てられる時間が大幅に減少しているので、論文の読み込みが全然できてい なかったのですが、私にとって重要な記述を発見しました。

昨年出版した「南西日本菌類誌」において新種 Aureoboletus liquidus ヌメリ アシナガイグチ(別名アキノアシナガイグチ)を記載しましたが、Wu et al. 2016 で Aureoboletus viscosus (C.S. Bi & Loh) G. Wu & Zhu L. Yang のシノ ニムとされました。

国内で良く知られている和名アキノアシナガイグチには、当初マレーシア産の Boletellus longicollis の学名が適用されていました。「南西日本菌類誌」では マレーシア産Boletellus longicollisと日本産アキノアシナガイグチは明らかに胞子の大きさが異なる点から、両者は別種で日本産は新種であるとし新たに和名を提唱しました。

LSUを用いた系統解析では、中国産の Boletellus longicollis と同定された標本 と日本産標本はブートストラップ値100で同種であると示唆されましたが、実は 中国産 Boletellus longicollis は Boletellus viscosus (Aureoboletus viscosusのBasionym)であったということになります。

Boletellus viscosus の原記載は Acta bot. Yunn. 4: 55 (1982) で、ヌメリア シナガイグチ記載にあたって、この文献を見落としていたことになります。



引用文献

  • Bi ZS, Lu DJ, Zheng GY (1982) Basidiomycetes from Dinghu Mountain of China. II. Some species of Boletaceae (1). Acta Bot Yunnanica 4:55-64
  • Wu G, Li Y, Zhu X, Zhao K, Han L, Cui Y, Li F, Xu J, Yang Z-L (2016) One hundred noteworthy boletes from China. Fungal Div. doi:10.1007/s13225-016-0375-8


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