牛肝菌研究所--TIPS



モノクロNRS撮影でSEMモドキ画像

なんちゃってリアルタイム深度合成(NRS法)を編み出した当初は「胞子の撮影には不向き」としましたが、グリーンフィルターを使ったモノクロ撮影と組み合わせることにより、より良い結果が得られることが分かりました。

Fig.1は通常のカラー撮影でオオヤシャイグチの胞子です。見方によっては表面の模様が凹んで見えたり隆起して見えたりして、正確な判断ができないことがあります。こういった場合は通常ならば「SEMに頼るしかない」となるわけです。で、SEMで撮影した胞子がFig.2です。さすが、簡易とはいえSEMです。胞子の表面がどのようになっているのか、よーく分かります。

SEMを使える環境が身近になったことにより、光学顕微鏡の技術向上がおろそかになってしまうのは好ましくありません。本稿で紹介する方法により、Fig.3のような「SEMモドキ」の画像を得ることができます。SEMで撮影したFig.2のような表面構造が、ほぼ表現されています。

Fig1
通常のカラー撮影
Fig2
簡易SEMの画像
Fig3
モノクロNRS撮影

ポイントは以下の3点です。

  • 顕微鏡の照明にグリーンフィルターを用いる
  • モノクロで撮影する
  • なんちゃってリアルタイム深度合成(NRS法)を用いる
  • 顕微鏡の照明にグリーンフィルターを用いる

    Fig.4は各種フィルターです。Fig.4左はハロゲン光を太陽光の色温度に変換するフィルターで、最も一般的なものです。Fig.4右はNDフィルターで、色温度を変えることなく光量のみを減らすものです。通常顕微鏡に内蔵されていますが、NRS法ではシャッタースピード1秒と長い露光時間を用いますので、さらにNDフィルターを追加するわけです。Fig.4上がグリーンフィルターです。どんなに高価な対物レンズであっても色収差(光の3原色RGBがずれて結像されること)はゼロにはなっていないのですが、分解能が高いとされる緑色の波長のみを取り出して結像すれば色収差はゼロになりますので、よりシャープでコントラストが高い像が得られます。各フィルターを顕微鏡にセットした状態がFig.5-6です。

    Fig4
    各種フィルター
    Fig5
    対物レンズに緑色の光が当たっている
    Fig6
    フィルターを設置する場所


    モノクロで撮影する

    照明にグリーンフィルターを使うと当然視野の中は緑一色の世界が広がります。そのまま緑色の写真を撮っても「なんじゃこりゃ」となってしまいますので、モノクロで撮影します。モノクロにするにはカメラ本体でモードを切り替えることもできますが、キャノンのEOSならばPCからカメラを操作することができます。Fig.7はEOSユーティリティというソフトウェアで、シャッタースピードや感度、ホワイトバランスなどを設定できます。モノクロ撮影のモードに切り替えることもできます(Fig.8)。

    Fig7 Fig8



    なんちゃってリアルタイム深度合成(NRS法)を用いる



    NRS法は露光時間の最中にピントを送って、あたかもリアルタイムで深度合成したような画像が得られる撮影法です。Fig.9のAの範囲をピント送りした画像がFig.10です。オニイグチ属の一種ですが、この胞子のように構造が粗大でコントラストが高い被写体であれば、Fig.9Aの範囲をピント送りしてもそこそこの画像になります。もっと表面の模様が微細な場合はFig.11のような画像になってしまいますが、ピント送りする範囲をFig.9のBにしたのがFig.12です。大げさに言えば「調子の悪い簡易SEMで下手に撮った」くらいの画像ではないでしょうか。ちなみにこの胞子は長さ5-6μm程度です。

    Fig10 Fig11 Fig12

    その他の作例もごらん下さい(Fig.13-18)。決して「SEMでなければ区別できない」とは言えないでしょう。

    Fig13 Fig14 Fig15
    Fig16 Fig17 Fig18

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    牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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