種内における形態の変異を見る:オオダイアシベニイグチ編


同一種であると同定できた複数標本の形態を比較し種内における形態の変異がどの位あるのかを検討した。下記に於いて、数サンプルの検鏡図を並べ形や大きさの比較をした。


かさ表皮菌糸の構造と先端細胞の形状

かさ表皮菌糸は錯綜し、所々先端が立ち上がっている構造はどの標本でも同じであったが、先端細胞の形状、大きさには変異が見られた。平均的サイズよりもかなり大きなものが描かれた標本もあるが、それに目を奪われ典型的なものをあまり見ていなかった結果と考えられる。形状は概ね先端が膨らんだこん棒状であると言える。大きさの変異は図に示した程度の巾をもつと考えられる。



側シスチジアLeptcystidia

子実体の成熟度合いによって大きさが変化すると思われる。いずれの標本も紡錘形、便腹形等で大きさにはばらつきが見られる。



柄シスチジアCaulocystidia

紡錘形、便腹形、棍棒形など様々な形と大きさが見られる。また検鏡箇所によっても形や大きさが異なることが多い。通常、柄下部の方がより大型の物が見られるようだ。



担子器Basidia

形や大きさは一定せず、これらをもって同定の材料とするのは現実的でないと思われる。



担子胞子Basidiospore

上図は胞子の大きさの標準偏差をn=100で算出し、最小と最大の胞子を2つ並べ、標本毎の大きさを比較したものである。

長野市戸隠産は同一林内に発生したもので、大きさやQ値は全く同じとしていいほど近い数値が得られた。BTS-003H-090620のみ未成熟子実体であったため胞子も未成熟であったと考えられ若干小さい。山ノ内町産と須坂市産は若干小さかった。最小値は11.8μmから14.7μmで3μm程度の巾があり、最大値は13.6μmから16.4μmでやはり3μm程度の巾があった。

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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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