肉眼的特徴
傘:55-90mm,半球形,のち饅頭型から平らに平開する.縁はわずかに管孔面よりせりだし,幼時は内側へ巻く;表面は乾性,ややビロード状,湿時弱い粘性がある;色はYellowishBrown,OliveBrown;傷つけても変色しない.
傘肉:厚さ20mm以下,色はPaleYellow,空気に触れると青変する;肉の味は苦く,特別な臭いはない.
柄:65-110×16-25 mm, ほぼ上下等経の円柱状または下方に向かってやや太くなり, 中心生, 中実; 表面は乾性,地色は上部Yellow,下方に向かってRedまたはReddishBrown, 全面に網目を表し頂部では細かく地色と同色かやや淡色,下方へ向かって荒く,色はredまたはReddishBrownとなる;空気に触れると青変する;根元はYellowの菌糸体に被われる.
柄肉:色はPaleYellow,柄表皮下ではやや濃色;空気に触れると青変する.
管孔:長さ10mm以下, 柄の周囲において陥入し,はじめYellowのちにGreenishYellow; 空気に触れると速やかに強く青変する.
孔口:2-3 per.mm, 類円形のち類角形, 管孔と同色;空気に触れると速やかに強く青変する.
胞子紋:Olive
呈色反応:KOHですべての部位が褐変または黄変;アンモニアですべての部位が褐変または黄変;グアヤクチンキですべての部位が青変;メルツァーですべての部位が濃青色;フェノールで傘肉が茶色,柄表皮が青色.
顕微鏡的特徴
担子胞子:縦(11.2)12.9〜14.6(16.3)×横(4.4)4.8〜5.3(5.59)μm 平均13.75×5.03μm Q値(2.17)2.57〜2.89(3.19) 平均2.73 N100;側面になだらかな凹みがあり(イグチ型), 長楕円形, 平滑, 薄壁, 緑を帯びた淡い黄色,KOH下で淡黄色,非アミロイド.
担子器:縦27〜38横11〜12μm,4胞子性.
側シスチジア:縦48〜55×横9〜12μm,紡錘形,無色,薄壁.
縁シスチジア:管孔縁部に群生し紡錘形,縦23〜29×横5〜9μm,有色(KOH下で黄土色)または無色,薄壁.
柄シスチジア (頂部):表皮上に密に並ぶ.縦31〜50×横11〜14μm, 紡錘形,無色,薄壁.
柄シスチジア (下部):先端が伸張した紡錘形で隔壁を持ち群生する.縦95〜120×横10〜18μm,有色(KOH下で黄土色)または無色,薄壁.
傘表皮:幅5-8μmで緩く錯綜しやや立ちあがる,先端細胞は先細の円柱形で縦20〜50×横5〜8μm.茶色(水でマウント),KOH中で黄土色.
子実層托実質はイグチ亜型.全ての菌糸にクランプを欠く.
以上,標本BTS-004i-090822に基づき記載.
発生地,時期と分布:7月から9月にウラジロモミ,コメツガ,ドイツトウヒ等の亜高山帯針葉樹林に発生し,分布は日本(本州,北海道),中国,ヨーロッパ,北アメリカ.
供試標本:BTS-004F-090711,長野市戸隠,標高約1300m,ウラジロモミ;BTS-004G-090714,長野市戸隠,標高約1300m,ウラジロモミ;BTS-004H-090721,新潟県妙高市,標高約1200m,ドイツトウヒ;BTS-004i-090822,長野県立科町,標高約1800m,コメツガ.
コメント:
Smith and Thiers 1971によれば「菌糸隔壁にアミロイド反応が見られるため最も同定しやすいBoletusである」とされている.本種に酷似した未記載種が,同様の環境に発生しているが,メルツァーによる呈色反応テストで容易に区別することが出来る。かさ直径が100mmから200mm程度としている文献が多いが,採集した標本は中型の物が多かった.
類似種:
オオダイアシベニイグチは,柄の配色が上部赤く下部黄色い,肉の青変性が弱い,苦味がない,傘の色はDullOrangeである点で本種と容易に区別できる ; ニセアシベニイグチは,発生地が里山の広葉樹林である,肉にチーズのような匂いがあり苦味がない,管孔の長さは3mm程度などの点で本種と容易に区別できる.
参考文献
Boletus of Michigan Smith and Thiers/
The Boleti of Northeastern North America Dick & Snell/
North American Boletes A.E.Bessette & W.C.Roody & A.R.Bessette/
Fungi Europaei 2 Boletus Munos/
Fungi of Switzerland/
British Fungus Flora Watring & Hills/
Nordic Macromycetes Vol.2/
原色日本新菌類図鑑
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