Boletus panniformis Taneyama et Har. Takah. sp. nov.
モウセンアシベニイグチ(新種)

Mycoscience 54 (2013) p.459

panniformis = felted フェルト(毛氈)状の


肉眼的特徴

:60-140(-170)mm,半球形,のち饅頭型から平らに平開する.縁はわずかに管孔面よりせりだし,幼時内側へ巻く;表面は乾性,フェルト状,褐色の細鱗片を付着し,湿時弱い粘性がある.色は帯黄褐色からベージュ, 擦っても変色しない.

:10-25(-30) mm, 淡黄色,柄表皮下や基部で赤みを帯びる.傷つくと速やかに青変する; 味苦く, 特別な臭いはない.

:65-130×15-35 mm, ほぼ上下等経の円柱状または下方に向かってやや太くなり, 中心生, 中実, 乾性, 地色は淡黄色から黄色, 頂部に細かい網目を表し下方へ向かって縦長不鮮明となるが中部まで明瞭な場合もある. 網目の色は頂部では黄色, 下方へ向かって赤色, 暗赤色. 網目とともに赤色, 暗赤色の細粒点に覆われる. 時に全面が細粒点に被われ網目が不鮮明なことや細粒点が少なく地色が見えることもある. 擦ると青変する. 基部は黄白色の菌糸体に被われる.

管孔:長さ 7-15(-19) mm, 柄の周囲において陥入し,はじめ黄色のちに帯緑黄色, 汚黄色となる. 傷つくと速やかに強く青変する.

孔口:2-3 per/mm, 類円形, 管孔と同色.傷つくと速やかに強く青変する.

胞子紋:オリーブ

呈色反応:KOHで全ての部位が黄変または褐変;アンモニアで全ての部位が黄変または褐変;グアヤクチンキで全ての部位が青変するか, 反応が無いこともある;フェノールで全ての部位が褐変;アニリンで肉と管孔が黄変;メルツァーで全ての部位が反応無し.


顕微鏡的特徴

担子胞子:(11.3-)13.6-15.2(-16.4)?(4.6-)5.4-6.0(-6.5)?m, (n = 266, mean length = 14.37ア0.78, mean width = 5.69ア0.28, Q = (2.0-)2.4-2.7(-3.3), mean Q = 2.53ア0.17);側面になだらかな凹みがあり(イグチ型), 長楕円形からやや紡錘形, 平滑, 薄壁,水封で帯緑灰色,KOH下で淡い蜜色,非アミロイドまたは弱い偽アミロイド.

担子器:(24.2-)26.6-33.2(-38.9)×(10.8-)11.6-13.0(-14.4)μm, (n = 75, mean length = 29.89±3.29, mean width = 12.30±0.71);KOH下で無色, 非アミロイド,4胞子性でステリグマは(3.0-)3.5-4.7(-5.3)×(1.5-)1.8-2.4(-3.0)μm, (n = 74, mean length = 4.10±0.57, mean width = 2.07±0.29)

側シスチジア:(35.3-)38.8-56.1(-77.6)×(6.3-)7.3-10.2(-14.5)μm, (n = 49, mean length = 47.43±8.63, mean width = 8.77±1.47);便腹形, 紡錘形,KOH下で無色, 非アミロイド,薄壁.

縁シスチジア:(18.6-)22.8-32.2(-37.4)×(4.4-)5.7-7.9(-10.2)μm, (n = 94, mean length = 27.49±4.67, mean width = 6.78±1.12);便腹形, 紡錘形,KOH下で無色, 非アミロイド,薄壁.

子実層実質を構成する菌糸:外側へ向かって散開する(イグチ亜型).側層菌糸の太さ(5.0-)6.0-7.9(-9.2)μm (n=54, mean with = 6.93±0.96),中層菌糸の太さ(2.6-)3.0-4.4(-5.5)μm (n=69, mean with = 3.69±0.71);KOHで無色,非アミロイド,薄壁.

かさ表皮を構成する菌糸:錯綜し幅(4.5-)5.9-9.4(-14.7)μm, (n = 113, mean width = 7.63±1.73),末端細胞は棍棒形,円柱形, (26.3-)30.8-50.1(-71.7)×(4.8-)7.5-10.6(-13.2)μm, (n = 64, mean length = 40.43±9.63, mean width = 9.08±1.54);菌糸表面は平滑でなく褐色の細胞間色素が細胞壁に沈着し(Incrusted) KOHで融解しない.

かさ実質を構成する菌糸:円柱形で錯綜し,径(3.8-)5.3-9.6(-14.2)μm, (n = 135, mean width = 7.48±2.16);KOHで無色,偽アミロイド.

柄表皮:子実層状をなし柄担子器,偽担子器,柄シスチジアが密に並ぶ.

柄上部シスチジア:(24.4-)29.3-59.1(-100.4) × (5.4-)6.6-9.3(-12.0)μm, (n=79, mean length = 44.20±14.86, mean with = 7.94±1.36),便腹形, 紡錘形,棍棒形,水封で赤色,KOHで黄色, 非アミロイド, 薄壁.

柄下部シスチジア:(41.1-)50.1-99.6(-148.6) × (4.7-)6.0-7.8(-8.9)μm, (n=38, mean length = 74.87±24.77, mean with = 6.90±0.93),隔壁を持ち大型,KOHで褐色を帯びる.

全ての菌糸にクランプを欠く.

供試標本:国立科学博物館に所蔵 TNS-F-44618から44629


発生地,時期と分布:6月から9月にウラジロモミ,コメツガ等の亜高山帯針葉樹林に発生し,分布は本州の亜高山帯(長野,山梨,岐阜{私信}, 北海道).

コメント: 幼時,傘表面小鱗片が不明瞭な子実体はアシベニイグチに酷似するため,肉眼所見と肉の味が苦いといった所見のみで混同されている.アシベニイグチは,傘表面に小鱗片が無い,メルツァーで青変する点で本種と容易に区別できる.

参考文献
Boletus of Michigan Smith and Thiers
The Boleti of Northeastern North America Dick & Snell
North American Boletes A.E.Bessette & W.C.Roody & A.R.Bessette
Fungi Europaei 2 Boletus Munos/Fungi of Switzerland/原色日本新菌類図鑑

柄頂部網目
柄中部網目
柄頂部網目(未熟子実体)
柄中部:網目が無いこともある。
かさ表皮
かさ表皮(未熟子実体)
呈色反応
呈色反応
呈色反応
子実層托実質断面
子実層托実質断面
側シスチジア
担子器
縁シスチジア
かさ表皮
かさ表皮菌糸先端細胞
かさ表皮菌糸
かさ表皮菌糸
柄肉菌糸 in Melzers
柄上部シスチジア
柄上部シスチジア
柄j表皮 in Water
柄下部表皮 in KOH
柄下部シスチジア
胞子:ドライ
胞子:KOH
胞子:Melzer



その他の写真
長野県上高井郡高山村
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長野県上高井郡高山村
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北海道苫小牧市
長野市戸隠
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