Boletus cepaeodoratus Taneyama et Har. Takah. sp. nov. |
cepaeodoratus = onion + odor タマネギの匂い 肉眼的特徴 傘:(55-)70-150mm,半球形,のち饅頭型から平らに平開する.縁はわずかに管孔面よりせりだし,幼時内側へ巻く, 乾性,平滑,湿時弱い粘性がある. バラ色で老成するとやや橙色を帯びる, 変色性はない. 肉:厚さ10-24mm,明黄色,傷つくと弱く青変する. 特別な味はなく乾燥タマネギのような臭いがある. 柄:55-130 x 19-43 mm, 上下同径か下方に向かってやや太まる, 中心生, 中実, 乾性.地色は黄色,全面に網目を表し下方へ向かって縦長不鮮明となりときに頂部のみとなる場合もある.網目の色は頂部では黄色, 下方へ向かって赤色.下部は帯赤褐色の細粒点に覆われる. 擦ると青変する. 基部は黄白色の菌糸体に覆われる. 管孔:長さ (2-)3-11 mm , 柄の周囲において陥入し,はじめ黄色のちに帯緑黄色. 傷つくとと速やかに青変する. 孔口:1-3 per mm, 類円形のち類多角形, 管孔と同色. 傷つくとと速やかに青変する. 胞子紋:オリーブ 呈色反応:KOHでかさ肉以外の全ての部位が褐変;アンモニアで全ての部位が黄変または褐変;グアヤクチンキで表皮と管孔が青変;フェノールで表皮と管孔が褐変;ホルマリンで管孔が青変. 顕微鏡的特徴 担子胞子:(8.4-)9.9-11.6(-13.9)x(3.4-)4.0-4.5(-5.3)μm meanL=10.76±0.82 meanW=4.24±0.27 Q=(1.9-)2.4-2.7(-3.2) meanQ=2.54±0.17 N=1000(8標本で測定);側面になだらかな凹みがあり(イグチ型), 楕円形, 平滑, 薄壁,帯黄灰色,KOH下で淡い蜜色,非アミロイドまたは弱い偽アミロイド. 担子器:(23.9-)28.0-33.9(-38.9)x(8.6-)10.0-11.4(-12.1)μm meanL=30.97±2.95 meanW=10.73±0.70 N=75;4胞子性. ステリグマ(3.0-)4.2-5.7(-7.3)x(1.3-)1.8-2.2(-2.4)μm meanL=4.95±0.75 meanW=1.99±0.22 N=57, KOHで淡黄色から無色,非アミロイド. 側シスチジア:(19.2-)25.3-35.3(-40.4)x(4.8-)5.9-7.8(-10.1)μm meanL=30.31±5.03 meanW=6.81±0.95 N=87; 紡錘形,無色,薄壁.KOHで淡黄色から無色,非アミロイド. 縁シスチジア:2タイプ存在し, ひとつは紡錘形から類こん棒形で(18.6-) 22.6-32.1 (-40.2) × (4.1-) 5.7-7.3 (-8.2 ) μm (n = 80, mean length = 27.35 ± 4.75 μm, mean width = 6.48 ± 0.78 μm);もう一方は複数の隔壁を有し紡錘形, 先端が尖った数珠型 (25.5-) 28.7-36.4 (-39.5) × (6.1-) 6.6-8.2 (-10.1) μm (n = 35, mean length = 32.53 ± 3.88 μm, mean width = 7.42 ± 0.79 μm),無色,薄壁.KOHで淡黄色,非アミロイド. 子実層実質を構成する菌糸:外側へ向かって散開する(イグチ亜型).側層菌糸の太さ(4.7-)6.3-9.7(-13.8)μm meanW=8.01±1.73 N=57,中層菌糸の太さ(2.7-)3.8-5.1(-5.8)μm meanW=4.44±0.67 N=55;KOHで無色,非アミロイド. かさ表皮を構成する菌糸:毛状被を形成し赤色の色素を有し,しばしばゼラチン状付着物が見られる., 径(2.9-)3.9-5.1(-6.8)μm meanW=4.5±0.57 N=100. 末端細胞は(18.0-)34.4-68.2(-92.7)x(4.0-)4.5-6.7(-10.0)μm meanL=51.31±16.94 meanW=5.56±1.10 N=53,円柱形,長こん棒形,しばしば部分的に肥大することがある, KOHで黄色,非アミロイド. かさ実質を構成する菌糸:緩く錯綜し,径(4.2-)5.6-8.7(-10.7)μm meanW=7.15±1.53 N=102,KOHで無色,非アミロイド. 柄表皮:子実層状をなし柄担子器,偽担子器,柄シスチジアが密に並び,赤褐色の色素を有する;KOHで橙色,非アミロイド. 柄シスチジア:棍棒形,円柱形,紡錘形, 薄壁, 隔壁を持つ物が見られ, 頂部では(27.3-)34.0-47.0(-56.6)x(5.3-)6.5-8.4(-11.1)μm meanL=40.53±6.49 meanW=7.44±0.96 N=70, 下部では褐色の内容物を持ち(32.5-)41.2-69.5(-107.1)x(5.4-)5.9-7.9(-10.2)μm meanL=55.36±14.18 meanW=6.91±0.96 N=69 柄実質を構成する菌糸:縦方向に平行か部分的にやや錯綜した菌糸からなり,径(5.0-)7.4-12.8(-17.2)μm meanW=10.09±2.73 N=50, KOHで無色,非アミロイドまたは弱い偽アミロイド. 全ての菌糸にクランプを欠く. 供試標本:国立科学博物館に所蔵 TNS-F-44601から44604, 44630から44637; TNS-F-18867と TNS-F 2226(石川産) 発生地,時期と分布:7月から9月にアカマツ, コナラ,ミズナラ,クヌギ等の混生林に発生し,分布は長野,新潟,石川. コメント:本菌は大型でバラ色のかさ,網目のある赤い柄, 短い管孔, 肉に乾燥タマネギの匂い, 青変性を持ち, 複数の隔壁を有する縁シスチジアも持つ特徴がある. 管孔が短い事からニセアシベニイグチ, 青変性を持つことからミヤマイロガワリと混同されやすい. ニセアシベニイグチは肉の青変性は弱くチーズ様の匂いがあり, 柄の網目は頂部に限られ, 縁シスチジアは先端が膨らんだこん棒形である点が本種と異なる. ミヤマイロガワリはかさの色が暗赤褐色を呈し, 柄の網目は頂部に限られ, 肉にはスパイスミックス様の匂いがあり, 縁シスチジアは紡錘形, かさ表皮を構成する菌糸の末端細胞はシスチジア状に肥大する点が本種と異なる.
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