ススケヤマドリタケとそっくりさん
ススケヤマドリタケは、標高の低い場所から1600m程度までの針葉樹林に幅広く分布しています。具体的には、石川県の海岸沿いのクロマツ、兼六園のアカマツ、長野県内では標高800mから1600mの範囲のドイツトウヒ、アカマツ、ウラジロモミなどです。
これまで信州きのこの会で標高1700m以上の富士山や八ヶ岳で行われた観察会では、ススケヤマドリタケとされた菌が採集されてきました。ススケヤマドリタケは亜高山のオオシラビソなどにも発生するということになっていましたが、そうではないことが明らかとなっています。
Fig1はススケヤマドリタケ、Fig2は「そっくりさん」で肉眼的にどう違うのかを言うことは困難です。強いて言えば、「そっくりさん」の方が、柄の網目が粗いことが挙げられますが、必ずしもそうでないこともあります(Fig3,4)。
確実に見分けるには顕微鏡観察が不可欠となります。かさ表皮の菌糸構造と胞子を見れば一目瞭然です。Fig5,6はかさ表皮、Fig7,8は胞子で、かさ表皮は生標本を検鏡し両者の構造の違いを明瞭にとらえることが出来ました。
ススケヤマドリタケの胞子は、長だ円形からやや紡錘形、「そっくりさん」の胞子は紡錘形から長紡錘形で、長さは前者が14-16ミクロン程度、後者は16.3-18.6ミクロン程度で、かさ表皮の所見と合わせて「両者はそれぞれ別種である」とすることが出来ます。
「そっくりさん」は標高1600m以下のフィールドで見つけたことはありません。ススケヤマドリタケとの肉眼的区別は困難ですが、標高1600m以上に発生していれば「そっくりさん」であろうと予測することは可能です。国内で未記載であることは確実で、新種の可能性もあると考えています。
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