熱乾燥の標本
現在は山岳地帯であっても道路が整備され、日帰りで採集に行く事が出来るという恵まれた環境となっていますが、かつては深山の調査は大変だったようです。電気が通っていない山小屋に泊まり込み、標本の乾燥はたき火の熱を利用していたそうです。
熱乾燥の温度調節に失敗した場合、水分含有量が多い標本では、組織が煮えてしまうことがありますが、日本のとある標本を見た海外の研究者が、「この標本はボイルしてあるのか?」と聞いてきたという話もあるようです。
最近ハーバリウムから拝借した標本は、十数年前のもので、やはり熱乾燥によるものと思われますが、組織が煮えてしまっているようでした(fig.1)。側シスチジア(fig.2)、柄シスチジア(fig.3-4)はかろうじて確認可能でした。自身で作成し失敗した標本ならば「こりゃだめだ」と投げ出すところですが、今回は意地でも探し出したいシスチジアがあったため、そのためだけに丸一日を費やしました。
結果、粘りに粘って、ようやくひとつだけ確認する事が出来ました(fig.5)。
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