子実層托実質の切片作成と縁シスチジアの確認
イグチの検鏡に於いて、子実層托実質縦断面の切片を作成するのは難しいとされています。しかしこれを確実にこなさなければ縁シスチジアの正確な観察はできません。ある種のイグチでは、管孔縁部まで子実層に覆われ管孔縁部に存在するシスチジアは実は縁シスチジアではなく側シスチジアである場合があります。管孔縁部にあってもそれが「真の縁シスチジア」なのか判断するためには子実層托実質縦断面の良い切片の作成が不可欠となります。
ここでは「真の縁シスチジア」を次のように定義します。「群生し縁部に不実帯を形成する性質を持つ物。これらは子実層托実質の中層菌糸に由来する物で、中層菌糸が縁部に向かい散開し、その先端がシスチジア状になる。」
具体的にどこを切り出すのか。
fig1-Aのように切り出すにはピス横断面と管孔が平行になっている必要があり、
fig1-BやCの位置で切り出した物は良い切片とは言えません。ミクロトームにセットされた切片がどのような状態なのかは実体鏡で把握することが出来ます。(fig2、3実体鏡とミクロトーム)
fig1-Aの位置で切り出せるかを確認したのがfig4、それをスライドグラスに乗せたものがfig5です。検鏡してみるとfig6,7のように、群生する縁シスチジアが確認でき、その構造は子実層や子実下層とは異なっていることが分かります。また、側シスチジアの有無やその形状の確認も容易です。(fig8)
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