バイアス

たびたび取り上げていますがPhotoRulerという検鏡写真から組織のサイズを測定できるソフトウェアがあります。左下のコラム(fig赤で囲ってある)にはひとつ計測する毎に平均値や標準偏差が表示され、その感覚はなかなか快感とも言えるものです。が、ひとつ注意せねばならないことが明らかになりました。

見た目が非常によく似ている特定の分類群を正確に見分ける際、傘表皮を構成する菌糸の太さが重要であるという仮説を立て調べています。種Aと種Bでは、平均値においてどの程度の差があるのか分かっていますが「この標本は見た目からして種Aであろう」という先入観の元に、左下のコラムに表示される「ひとつ計測する毎に変化する平均値」を見ながら(心地よいのです!)作業すると、「種Aであろう」という予想に近づくよう無意識のうちに(意識的かも知れない)測定箇所を選り好みしてしまうことがわかりました。

このままでは「仮説の実証に都合の良いデータを収集」という事態になりかねません。試しに左下のコラムを物理的に隠し見えなくしてから再測定すると異なった結果が得られました。「バイアスがかからぬよう注意すべき」と言葉で言えば簡単ですが、人間のやることですからあてになりません。やはり「計測する毎に平均値や標準偏差が表示されるコラム」を見えなくするのが確実です。



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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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