球形細胞?の正体

とある種のかさ表皮を観察した際、球形の細胞らしきものが確認できました(Fig.1)。よく見ると同様のものがしばしば見つかりました(Fig.2)。さてこれはなんだろうということで、その正体に迫ってみました。

まず、これは気泡なのかということですが、コンゴーレッドで染まっているため気泡ではないと言えます。また、フロキシンでも染まるため(Fig.3)、細胞壁と細胞質を有していると判断できます。菌糸の断面である可能性も考えましたが直径が太すぎます。よく見てみると、どうやら菌糸からはみ出しているように見えますが(Fig.4-5)。それにしては、あまりにも肥大していますので、これほどの内容物がはみだしたりするのかと疑問が残ります。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5 Fig.6

ここまではKOH液中での観察でしたので水封での観察を行ったところ、やはり同様のものが見られました(Fig.6)。直径はKOH液中でのものより小さいようです。ここにKOHを加えた様子を動画で記録しました(Fig.7)。右上の点線で囲んだ部分に注目です。画面左からKOHが侵入し、組織を柔軟化しつつ菌糸の内容物を融解していき、点線内の球形細胞状のものは、瞬間的に肥大し2倍程度の直径になる様子が確認できます。

以上のことから次のようなことが考えられます。菌糸の細胞壁が薄い箇所から内容物がはみだし、細胞壁はひっぱられてより薄くなる。そこへKOHが侵入してくると、内容物が膨張する(浸透圧が関係している?)。結果、細胞壁の厚さが十分にある箇所に比べ、膨張の度合いが著しくなる。

菌糸から内容物がはみだす現象が代謝に関わるものであれば、球形細胞と思われたものは菌糸のウ○コとでも言えるのではないでしょうか。Fig.8は別の種で観察されたものですが、この現象は珍しくないのかも知れません。

Fig.7 Fig.8


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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