イグチの変異

ちょっと前に「イグチの変異の大きさをなめちゃいけない」と書きましたが、その変異の幅はどの程度なのでしょうか。Fig.1-5には、それぞれ子実体が2つずつ並んでいます。これらは皆同種を並べたものといったら信じられるでしょうか。当初は自身でも別種として扱っていたものもあります。

ある肉眼的変化が種内の変異であると判断するためには、多くの標本の顕微鏡観察をすることが不可欠です。観察といってもただ見ればよいわけではありません。数値データをきちんと見ることが必要となります。胞子の大きさは最低100個測定、その他の組織の大きさは50を目標に測定します。

測定する項目は次の通りです。かさ表皮を構成する菌糸の幅と末端細胞の大きさ、かさ実質菌糸の太さ、担子器とステリグマ、縁と側シスチジア、管孔実質菌糸の太さ、柄のシスチジアは頂部、中間部、基部すべて、柄の担子器、柄実質菌糸の太さ、担子胞子の大きさと縦横比、すべての部位でメルツァー反応を確認し、プラス特筆すべき形質があればそれも、といったところです。これらの数値は標準偏差や平均値などを算出し標本ごとにどの程度の変化があるのかを比較します。

こうして検討した結果、提示した写真の標本はそれぞれ同種であるということができるのです。もちろん、さらにDNAを調べて裏付けを強化することが重要となってきます。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.4 Fig.5


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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