厚壁の担子器

とある種の標本を検鏡していたとき、ふとこれまでに見たことがないものを見つけました。異様に細胞壁が厚い担子器です(Fig.1)。当初はある種の奇形であると思いましたが、そうではないことを共同研究者の高橋春樹氏から教えていただきました。ハラタケ類のいくつかの種には、まれに厚壁担子器Sclerobasidiaを生成することが知られているとのことです。

細胞壁が厚くコントラストが高いので被写界深度が浅い油浸100倍レンズでもNRS法(なんちゃってリアルタイム深度合成)で明瞭に4つのステリグマを撮影することができます(Fig.2)。通常の担子器ではこうはいかないです。

この標本にはFig.3のように通常の薄壁の担子器も混在しています。

さて、問題はこの厚壁担子器を種の特徴として扱うのかどうかなのですが、とりあえずは複数標本をみて、どの程度の頻度で見られるのかを検討します。同一子実体でも、厚壁担子器が沢山見られるヒダと、そうでないヒダがあり、別の子実体ではほとんど見つかっていません。探索の範囲を、本種と同種かもしれない近縁群の標本にまで広げると、砂漠に落としたコインを探すような作業になります。

Fig.1 Fig.2 Fig.3


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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