きのこ愛好者のためのDNAデータベース豆知識 その1

「DNAを調べればすべて確実にケリがつく」という印象を持っているきのこ愛好者の方は多いのではないでしょうか。しかし、決してそのようなことはなくやっかいな問題を抱えているのが現状です。ひとつは「データベースには不正確なデータが山のようにある」ということです。これは菌類研究者の間では常識となっています。

具体的にどういうことなのかといいますと大体以下のようなことが起こったのだと推測されます。
  1. そもそも「とある種X」の一番最初に登録されたデータは形態に基づいて同定され、DNAをとりだして登録されているが、その同定がすべて正しいとは限らない。
  2. 最初に登録されたデータの同定が間違っている場合、誤同定されたデータに基づいてさらに誤ったデータが追加される。
  3. あるいは別の研究者が正しい同定をしてデータが追加される。
  4. 公的標本庫に収められた誤同定された標本のデータが追加される。
      (標本ラベルに記述された学名が正しいとは限らない)

なぜ誤同定が起きるのか、それは原記載に書かれている情報が不足しているからではないでしょうか。古くに記載された種ほど、その記述は簡便なものとなっています。つまり「原記載に一致するきのこが何種類もある」という事態になっているのです。

実際に同一の学名で登録されたデータAとデータBを用いて系統解析した時に、AとBが全く異なる系統となる結果が得られるケースがしばしば見られます。もちろん、AとBが両方とも正しいということはありえませんので、どちらかが誤っていることになります。あるいはどちらも誤っている可能性もあります。仮にこれがAとBとCといったように三つどもえになっていればさらにややこしいことになるでしょう。

「とある種X」の一番最初に登録されたデータがホロタイプ(新種発表時に指定された、種の基準となる標本)に由来するものであれば上記の問題は起こりません。しかし、古い時代に発表された種のホロタイプからDNAを取り出すことは困難となっているのが現状です。



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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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