牛肝菌研究所--TIPS



写真による胞子紋色の判定

イグチの胞子紋採取はなかなかやっかいです。採取から1日たつと胞子を落とさなくなり、遠方から送られてきた標本では、まともに採取できた例はありませんでした。他には、虫の酵素により管孔部がどろどろに溶けたりして失敗することや、まる2日ねばって、うっすらと胞子が積もっただけということも多々あります。

胞子の積もり方が少なければどんな色なのかの判定は困難ですし、また良いサンプルであっても人間の目は光の条件や心理的な思いこみ、疲労などで常に正確に色を判断できるとは限りません。そこで写真とグラフィックソフトウェアを使った客観的な色判定ができる方法を考えました。


  • 標本数種の胞子紋を濾紙に採取。カラーチャートと共に写真撮影。
  • Adobe Photoshopを使い、カラーチャートを基準に色補正。
  • 任意のポイントの明度、色相を記録、グラフにする。
  • 彩度も記録すると3次元のグラフになるため考慮しない。
  • 胞子の積もり方による色相の変化がどの程度あるのかを見る。
  • 胞子の積もり方が十分でないサンプルを用い上記から得られた変化の傾向を当てはめ十分に胞子が積もった場合の色を推定する。

以下に、実際の測定結果を示します。縦軸は色相、横軸は明度で胞子が薄く積もった箇所は明度が高く、厚く積もった箇所は明度が低くなっています。同色の粒が積もった場合、積もった厚さによって色相が変化するとは考えづらいですが、実際には明度が高い箇所は色相が青方向(グラフでは緑までしか表示していない)に傾いています。これは「胞子の積もり方が少なく紙の色が透けて見える。カメラの特性の影響等」と考えられます。また明度が低いほど純粋な胞子紋色であるとしていいでしょう。

 Boletus subvelutipes






明度50付近の色相は45度から53度程度。

 Boletus reticulatus






明度50付近の色相は41度から49度程度。

 Boletus violaceofuscus






明度50付近の色相は33度から35度程度。

 Xanthoconium affine






明度50付近の色相は27度から32度程度。

 4種の比較


各標本、明度50付近での色を上の画像に示しました。

アメリカウラベニイロガワリはOlive、ヤマドリタケモドキはOlive Brown、ムラサキヤマドリタケはYellowish Brown、ウツロイイグチはReddish Brownであることが分かります。


左グラフでは、いずれの標本もほぼ同じ傾きで、明度の高さにより色相が変化していることが分かります。
 

下写真はムラサキヤマドリタケ胞子紋です。このように胞子の積もり方が少ないサンプルであっても、明度50付近まで胞子が積もった場合どのような色になるのかを、上に示したグラフから客観的に推測することができます。具体的には明度80度付近で色相が50度だった場合、明度が50の時、色相は赤方向に10度から15度程度変化し、その数値は35度から40度の間であると言えます。

上記方法で導き出された色(写真の右側)は、ほぼ正確に{厚く積もった胞子紋の色}を表現しているとしていいでしょう。

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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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