胞子の謎
胞子は十分に成熟しある程度の大きさになって初めて放出されると思っていたので「十分に成熟した落下胞子こそが本来の大きさを表すものである」としたくなります。しかし調べてみるとそうでもないようです。いくつかの標本では、落下胞子と子実層托に残された胞子とでは、後者の方がより大きな数値が得られています。(すべてN=100で算出)
標本BTS-003F
落 下 縦(11.5)13.0〜15.8(18.9)μm×横(4.3)4.8〜5.4(5.9)μm
子実層托 縦(13.1)14.3〜16.3(18.8)μm×横(4.8)5.1〜5.5(5.9)μm
標本BTS-003G
落 下 縦(12.9)13.9〜15.5(17.1)μm×横(3.8)4.8〜5.5(5.9)μm
子実層托 縦(13.0)14.7〜16.4(17.3)μm×横(4.6)5.1〜5.5(5.7)μm
上記の例では、子実層托に残された胞子の測定に於いて「小さい物は未熟であると判断し除外した」ことによる影響があるのかもしれません。しかし、次の例では明らかに数値に違いをみることができました。
標本BTS-024A
落 下 縦(11.0)11.7〜12.9(13.9)μm×横(4.2)4.4〜4.8(5.1)μm
子実層托 縦(11.9)13.0〜14.7(16.4)μm×横(4.3)4.6〜5.0(5.3)μm
落下胞子では長さが14μmを越えることは無く、ほとんどが12μmから13μmであるのに対し子実層托に残された胞子では14μmを越える物が多数見られ最大値も16.4μmと落下胞子の最大値を遙かに超えています。
この現象はまだ数標本で確認したのみなので、特定の種に起こることなのか、すべての種に通じることなのかはわかりません。記載に於いてもどのどちらの測定結果を書くべきなのか頭を悩ませることになりそうです。
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