きのこ愛好者のためのDNAデータベース豆知識 その1 「DNAを調べればすべて確実にケリがつく」という印象を持っているきのこ愛好者の方は多いのではないでしょうか。しかし、決してそのようなことはなくやっかいな問題を抱えているのが現状です。ひとつは「データベースには不正確なデータが山のようにある」ということです。これは菌類研究者の間では常識となっています。 具体的にどういうことなのかといいますと大体以下のようなことが起こったのだと推測されます。
なぜ誤同定が起きるのか、それは原記載に書かれている情報が不足しているからではないでしょうか。古くに記載された種ほど、その記述は簡便なものとなっています。つまり「原記載に一致するきのこが何種類もある」という事態になっているのです。 実際に同一の学名で登録されたデータAとデータBを用いて系統解析した時に、AとBが全く異なる系統となる結果が得られるケースがしばしば見られます。もちろん、AとBが両方とも正しいということはありえませんので、どちらかが誤っていることになります。あるいはどちらも誤っている可能性もあります。仮にこれがAとBとCといったように三つどもえになっていればさらにややこしいことになるでしょう。 「とある種X」の一番最初に登録されたデータがホロタイプ(新種発表時に指定された、種の基準となる標本)に由来するものであれば上記の問題は起こりません。しかし、古い時代に発表された種のホロタイプからDNAを取り出すことは困難となっているのが現状です。 |