乾燥標本作製に関して

きのこを調べるにあたって、最も重要なのが乾燥標本であるといっても差し支えないと思います。乾燥標本からは、顕微鏡的な形態データや化学的なデータ、そしてDNAデータを得ることができますが、その標本作製の質が悪く良質なデータがとれなければ、標本の価値は半減してしまうといってもいいでしょう。

  • Assessment of the DNA Quality in Mushroom Specimens: Effect of Drying Temperature
  • 良いきのこの乾燥標本の作り方
  • 上記リンク先で共通しているのは、紙袋に入れての乾燥は良くないということです。観察会での採集品を紙袋に入れて同時に大量に乾燥させるケースがありますが、そうして作製された標本は、KOHでも組織がきれいに戻らない、DNAの増幅ができないという事例を数回確認しています。通気性がある紙袋とはいえ、やはり子実体からでた水分がこもるのでしょう。完全に乾燥するまでによけいな時間がかかってしまうものと思われます。

    他にDNAの増幅ができない標本の例では、遠方から送られてきたものや、冷蔵庫にしばらく生で保管しておいたものがあります。水分、あるいはきのこ自身がもっている酵素でDNAが断片化してしまったと考えられます。

    意外な例としては、真空冷凍乾燥の標本もDNAの増幅に失敗しています。ただ、まだ2例しかやってないので確実なことは言えません。一方、長時間をかけての冷凍庫乾燥ではDNAの増幅に成功しています。ひょっとしたら、真空で急激に水分をぬく際に、DNAが断片化しているのかもしれません。



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