Retiboletus fuscus
いつの間にかオオミノクロアワタケに新しい学名が与えられていました。中国の研究チームによるものです(Zeng et al. 2016)。供試標本には日本産のものは挙げられておらず中国産標本を形態的に同定して記述しています。
以下に胞子のデータを記します。
1)Zeng et al. 2016
(8.5-)9-12(-13) × 3.5-4(-4.5) μm
2)愛知県産(Fig.1)
(9.7-)10.7-12.1(-13.4) × (3.3-)4.1-4.8(-5.4) μm
3)長野県産(Fig.2)
(9.8-)11.5-13.5(-16.3) × (4.1-)4.8-5.4(-6.0) μm
4)Hongo 1974
11 × 16 × 4-5.5 μm
上記の1と2は、ITS領域を比較したところ同種として良い感じでした。愛知県産は胞子の幅が広めですが、中国産のデータと大体一致しているといっていいでしょう。では愛知県産がオオミノクロアワタケなのかというとそうとも言い切れません。4の原記載と比較すると愛知県産、中国産はともにより小型の胞子です。より原記載に近いのは3の長野県産ということになります。さらには長野県産と愛知県産は別種であることが分かっています。
Zeng et al. 2016で扱われた標本はオオミノクロアワタケではないという可能性があります。やはりホロタイプ、あるいはタイプローカリティ産の標本を検討すべきなのでしょう。
引用文献
Hongo T (1974) Notes on Japanese larger fungi (21). J Jpn Bot 49:301-304
Zeng NK, Liang ZQ, Wu G, Li Y, Yang ZL (2016) The genus Retiboletus in China. Mycologia. doi:10.3852/15-072
|