イグチの分類に変化が

最近気がついたのですが、2016年11月にWu et al. (2016)が発表されていました。中国産イグチ100種を取り扱い、そのうち新種が46種、新組み合わせが26種、新属が4属という大論文です。

衝撃的だったのはNeoboletusオオウラベニイロガワリ属がSutoriusウラグロニガイグチ属のシノニムにされたことです。Wu et al. (2014)ではStoriusウラグロニガイグチ属は、後にNeoboletusオオウラベニイロガワリ属とされた一群と別系統とされていたのですが、今回のWu et al. 2016では、オオコゲチャイグチを解析に加えたところ、StoriusがNeoboletusの一群に含まれる結果になったようです。先に命名されたのがSutoriusなので、Neoboletusはシノニムということになったわけです。基準種となるウラグロニガイグチSutorius eximiusは、この一群の中ではかなり異質でちょっと信じがたい内容です。解析するOTUが増えれば、結果が変わることもあるかもしれませんが、暫定的にオオウラベニイロガワリなどはSutoriusであると扱うことになるのでしょう。

その他には、私が力を入れて調べている真っ赤なイグチにそっくりな種も新種Sutorius sanguineus G. Wu & Zhu L. Yang, として記載されています。残念なことに記載中での判別文では、比較すべき最も重要な種Boletus flammansについて何も触れられていませんでした。

コガネヤマドリと思われる種に新属Tengioboletusが与えられています。コガネヤマドリは形態的に所属不明だったのでこれは納得できます。

ムラサキヤマドリタケの一群を狭義のBoletusからはずしてない点はちょっと疑問です。系統的にクレードは別であるし、形態的にも明瞭に区別がつきますので、この一群を独立させると予想していましたが、そうはならなかったようです。

誤同定に基づいた記述もあったので書いておきます。中国産モウセンアシベニイグチが記載されていますが、かさ表皮の図を見る限りでは、日本産とは別物です。菌糸の構造、サイズや色素の状態が異なっています。中国産モウセンアシベニイグチはZhao et al. (2014)でも取り扱われていましたが顕微鏡的記載がなく、DNAを比較したところ中国産と日本産は別系統であることも示唆されたので中国産は本当にモウセンアシベニイグチなのか疑っていました。今回のWu et al. 2016では顕微鏡的所見が記述されていますので、中国産はモウセンアシベニイグチではないと確信するに至りました。

引用文献

  • Wu G, Feng B, Xu J, Zhu XT, Li YC, Zeng NK, Hosen MI, Yang ZL (2014) Molecular phylogenetic analyses redefine seven major clades and reveal 22 new generic clades in the fungal family Boletaceae. Fungal Divers 69:93-115
  • Wu G, Li Y, Zhu X, Zhao K, Han L, Cui Y, Li F, Xu J, Tang Z-L (2016) One hundred noteworthy boletes from China. Fungal Divers 81:25-188. doi:10.1007/s13225-016-0375-8
  • Zhao K, Wu G, Feng B, Yang ZL (2014) Molecular phylogeny of Caloboletus (Boletaceae) and a new species in East Asia. Mycol Prog 13:1127-1136

  • これがウラグロニガイグチ属になってしまった


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