DNA解析と形態観察

今調べている、北米産のBoletus flammansと思われる菌ですが、いくつかの文献に書かれている特徴をまとめるとおよそ次のような感じになっています。

かさは、赤色,暗赤色,バラ色,ココアブラウン;ややビロード状. 柄は赤く,頂部に網目を表し下方へ向かって不鮮明,赤い粒点を密に備える. 管孔は黄色;孔口は赤く青変性がある. かさ表皮を構成する菌糸は毛状柵状被を形成する. 担子胞子は長楕円形で10-14x4-5μm程度. 

Fig1からFig3は、いずれも上記特徴に一致し、見た目の印象は若干違っていますが、三者は同一種であろうと予測していました。Fig4からFig6はPseudocystidia、Fig7からFig9はCaulocystidiaですが、標本A,標本Bと標本Cとでは形態が異なっているように見えます。「三者は同一種であろう」という予測の元に検討すると、これは変異の範囲であろうと考えるのが妥当であると思えてきます。

しかし、標本Bと標本CのDNAを調べた結果は「両者は同一種であろう」という予測を支持しないものでした。(DNA解析は最近勉強しはじめたばかりで、解析プログラムの使用方法など習得できていませんので、あくまでも簡易的なものです。)

Fig1
標本A
Fig2
標本B
Fig3
標本C
Fig4
標本A Pseudocystidia
Fig5
標本B Pseudocystidia
Fig6
標本C Pseudocystidia
Fig7
標本A Caulocystidia
Fig8
標本B Caulocystidia
Fig9
標本C Caulocystidia

解析結果を受けて改めて検討してみると「変異」で済ますことのできない「形態の違い」というものが、どんなものであるのか見えてきたような気がします。手元には、掲載した標本以外に10標本ほどあり、さらに検討をしていくと{かさ表皮の毛状柵状被を形成する菌糸の太さ,形状}{胞子の大きさ}{シスチジアの形状,大きさ}等に、標本全数を二分する「形態の違いの傾向」があることが分かってきました。

DNA解析は難易度が高くアマチュアには手を出すことができない分野であろうと思っていましたが、データさえ入手できれば実践するのは困難ではないと実感しています。

形態観察に於いて、どの部分の何を検討すればいいのか? その答えを得る手段として、DNA解析は強力なツールとなると考えています。



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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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