アメリカウラベニイロガワリ

本郷博士が命名したアメリカウラベニイロガワリとは、ブナ・ミズナラ・シイ・カシなどの広葉樹林に発生し、胞子の大きさは11〜12.5×4〜5μmであるとされています。ここ2年ほど、亜高山帯針葉樹林に発生する類似のイグチを調べていますが、アメリカウラベニイロガワリとは異なるという感触を得ています。さらにいえば類似した数種が混在していることがわかってきました。

fig1は、鳥取県のミズナラ林で採集された物でまだ詳しく調べていませんが、これが本郷博士が命名したアメリカウラベニイロガワリであるとのことです。fig2から4は、いずれも、コメツガ・ウラジロモミ・オオシラビソなどの樹下に発生する物ですが、それぞれ別種であることがわかっています。

fig2は柄基部にRedish Hairを持ち、胞子の大きさは10〜12×4〜5μm程度、かさ表皮を構成する菌糸の太さの平均は4.8μm程度、

fig3は柄基部にRedish Hairを持つことがあり、胞子の大きさは13〜16×4.5〜5μm程度、かさ表皮を構成する菌糸の太さの平均は3.8μm程度、

fig4は柄基部にRedish Hairを持たず、胞子の大きさは12〜13×4.5〜5μm程度、かさ表皮を構成する菌糸の太さの平均は6μm程度

といった形態の違いが確認できています。これら形態の違いは、決して「変異」で済まされないものであることが分子系統解析でも裏がとれています。

先日、八ヶ岳で行われた信州きのこの会採集会ではfig4と同じ物が採集されましたが、アメリカウラベニイロガワリとカードに書き込まれていました。見た目が似ているからというだけで名前を付けてしまう風潮はなかなか減らない物だと感じています。

fig1 fig2 fig3
fig4


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牛肝菌研究所 by yuichi taneyama










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