今年は、菌学会大会と菌類観察会(フォーレ)が続けて行われるというスペシャルな日程となっており、場所は憧れの地、北海道でした。フォーレについては実行委員を努め、標本写真撮影を担当するため、撮影機材を車に積み込んでフェリーでの旅となりました。
新潟発、小樽行きのフェリーは、早朝4時半に着港するため、学会大会が始まるまでの数時間は札幌市内のフィールドを見て回り観察できたのはテングタケやベニタケ、イグチといった夏の顔ぶれでした。しかし撮影したくなるような状態の良い子実体は、ホコリタケの仲間のみでちょっと残念。
学会大会の初日は北海道大学農学部での開催でした。菌学会賞の受賞者講演からはじまり、3つの会場にわかれ口頭発表が行われました。信州大学のE先生は、以前「いくら探してもタマゴタケの菌根が見つからない。ひょっとすると腐生性なのか?」と言っていましたが、その後、順調に研究が進んだようで発表内容はタマゴタケの菌根についてでした。
高等菌類以外に関しての発表では、森林総合研究所の升屋先生による「クワガタナカセに寄生するラブルベニア目菌類」についての発表が面白かったです。「これはクワガタナカセナカセだ」と笑いをとっていました。
翌日は、午前中が学会2日目で午後からフォーレの講演会という日程でした。が、急遽、ドイツのホウキタケ研究者クリスタン先生を札幌市内のフィールドへ案内することになりました。我がフィールド調査員(妻)が、菌輪を描く黄色いホウキタケを見つけたからです。
その後、近くのスーパーできのこ展を開催しているという情報をキャッチし、覗いてみることにしました。現場へたどり着くと、情報をかぎつけた菌懇会会員数名がすでに駆けつけており、標本撮影の真っ最中でした。札幌きのこの会が協力しての展示ということで、菌懇会会員のA藤さんはクリスタン先生のために「展示してあるホウキタケを分けてくれ」と交渉していました。
午後からはいよいよフォーレの開幕です。五十嵐先生、竹橋先生、宮本先生の講演会からはじまりました。すべて北海道在住の先生で、北国ならではの菌類相に関してのお話を聞くことが出来ました。
講演会終了と同時に会場を採集会の本拠地苫小牧に移し、盛大に懇親会が開かれました。やはり、お約束の「みどりちゃん」が登場です。その後、老若男女が入り乱れて菌類談義に花を咲かせ、夜は更けていくのでした。
さて、いよいよ観察会となりました。通常、この時期は夏のイグチを見るには少し遅いとされているようですが、予想に反して沢山のイグチが採集されました。調査中であるアシベニイグチ類似種やアメリカウラベニイロガワリ類似種の発生が北海道でも確認でき、分布を知るための良い標本となりました。
菌学会とアマチュアキノコ会が共同で開催するスタイルは2008年の大山フォーレ以来、4回目となります。実行委員にもノウハウが蓄積され、さらに国立科学博物館の主導により採集から標本作成までシステマティックに進めることが出来るようになりました。海外から参加された研究者の方々から「このようなフォーレは見たことがない。自国でも是非やってみたい。」という言葉もあったそうです。
来年は新潟県十日町での開催が決定しています。長野からは近い開催地ですので、信州きのこの会からも大勢参加していただけることを期待しています。